イスラエル発の技術には様々な分野の技術がある事は先日の記事で記述しました。今回はその中の一つで、医療分野から「カプセル内視鏡」をご紹介します。

カプセル内視鏡はイスラエルのGiven Imaging社が世界で初めて開発・発売した、従来の内視鏡の常識を覆す、ケーブルを持たない画期的な医療器具です。

通常の内視鏡では困難な部位の検査も可能にするカプセル型内視鏡

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チンアナゴ(写真 : Wikipedia

水族館で私がいつも見とれる魚に「チンアナゴ」がいます。内視鏡はこれによく似ていて、長いケーブルの先端についたカメラを自在に操作して、食道や胃の内壁を観察する医療器具ですが、その精巧な動きは、チンアナゴを超える精度です。しかし、どんなに精巧に操作することができても限界があります。たとえば小腸。小腸は体外からもっとも遠くにあり、小腸自体も全長6~7mと長く、曲がりくねった構造のため、内視鏡での観察は至難の業です。

ここで、課題を解決するのが、「カプセル内視鏡」です。大きさは通常の錠剤くらい、そしてケーブルが無いため使用時に水と一緒に飲むだけで簡単に体内に入れる事ができます。さらに記録装置を体に装着する事でベッドに横になりながら診断せずとも、通常とほぼ変わらない生活をも送れるそうです。この小さな本体の内部には小型カメラ、小型ライトと無線機が内蔵されており、映した映像を体内から体外の記録装置に送られ、画像診断ソフトで病巣の発見を手助けするといことができます。

他分野の知恵が凝縮されたハイテクデバイス

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カプセル内視鏡(写真 : Wikipedia

このカプセル内視鏡のおかげで、小腸の腫瘍などを早期発見できるようになったとの声もあがっています。今後、世界中で一般的に利用されていくことはほぼ間違いないと考えられます。

こう聞くと、「なるほどすごいアイデアだ」と感心されるかもしれません。でも本当にすごいのは、医学・薬学・オプティクス・ロボット・通信といった多分野の知恵が凝縮されていることではないでしょうか。

イスラエル人のある医師がオプティクスの専門の若い技師に相談したことがきっかけで、約10年の開発期間を経て、世界に先駆けて実用化したそうです。異分野の技術者とのコミュニケーション、柔軟な連携、そういったイノベーション風土が結晶化したと言っては言い過ぎでしょうか。

Written by Y.O, H.T