アインシュタイン展

一般相対性理論を完成をはじめとした数々の偉大な業績で知られる天才科学者、アインシュタイン。しかしながら彼がユダヤ人であり、イスラエルのヘブライ大学設立にも多大なる貢献をしたことは、一般的にはあまり知られていないかもしれません。

現在、東京理科大学近代科学資料館において、「『アインシュタイン展』一般相対性理論100年-アインシュタインの業績と人となり-」が開催されています。相対性理論を分かり易く解説するとともに、天才アインシュタインの生い立ち、ユダヤ人としての第2次世界大戦の経験や、原子爆弾開発の理論的根拠を与えたことへ自責の念から晩年推し進めた平和運動などについても紹介されています。

日本イスラエル親善協会は後援として全面協力するとともに、開催実行委員長の北原教授へのインタビューも行っています。

今年は一般相対性理論完成から100年の記念すべき節目の年。入場無料となっておりますので、多くの皆様にお越しいただければと思います。

開催概要

展示名 『アインシュタイン展』一般相対性理論100年-アインシュタインの業績と人となり-
開催期間 2015年9月25日(金)〜12月10日(木)
開館時間 10:00〜16:00
※休館日: 日・月・祝
会場 東京理科大学近代科学資料館
2F 企画展示室及び多目的室
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3 アクセス
※JR飯田橋駅西口徒歩4分 / 地下鉄飯田橋駅B3出口徒歩3分
入館料 無料
お問合せ先
  • 東京理科大学近代科学資料館
  • TEL / FAX: 03-5228-8224 / 03-5228-8116
主催その他 主催: 東京理科大学近代科学資料館
学術協力: へブライ大学アインシュタインアーカイブ
特別協力: ハノフ・グッドフロインド/金子務/岡村浩
展示協力: 高エネルギー加速器研究機構(KEK)/つくばエキスポセンター/東京大学宇宙線研究所/特定非営利活動法人物理オリンピック日本委員会/理科ハウス/自然科学研究機構国立天文台
後援: イスラエル大使館/新宿区教育委員会/公益社団法人日本イスラエル親善協会/公益社団法人日本科学技術振興財団/公益社団法人日本天文学会/一般社団法人日本物理学会/株式会社毎日新聞社

JIFA広報誌「イスラエル」11・12月号掲載記事: 一般相対性理論100年 – アインシュタイン展開く

日本イスラエル親善協会(JIFA)では、アインシュタイン展開催に合わせて開催実行委員長の北原和夫・東京理科大学教授にインタビューを行っています。あわせてご覧下さい。

■ ヘブライ大学が資料を提供、創立50周年のJIFAが全面協力

日本イスラエル親善協会(JIFA)が来年、創立50周年を迎えるのを記念して、開催に全面的協力している「一般相対性理論100年――アインシュタインの業績と人となり」展覧会が12月10日まで、東京神楽坂の東京理科大学近代科学資料館で開催されている。9月28日にはオープニング・セレモニーが行われた。

アインシュタインの業績に関するあらゆる資料類を保有し、この展覧会に資料類を提供したヘブライ大学のハノフ・グットフロインド・アインシュタイン・アーカイブ学術館長(元同大学総長)がこの式典に参加、プレス説明会で展覧会の説明にあたった。

式典であいさつした同元総長は「日本は、相対性理論を最も早い段階から、かつ深く受け入れ、多くの優れた研究者が育った国である。2カ月以上の会期中に大学生、高校生など若い人たちが、偉大な科学者の業績と歩みを学んでほしい」と述べた。

■ 開催実行委員長北原和夫・東京理科大学教授に聞く

アインシュタインの一般相対性理論は、量子論とともに20世紀最大の物理学の理論とされる。一般相対性理論が今日どのような意味をもつのか、東京理科大学で開催されている『アインシュタイン展』の意義はどこにあるのか――。この特別企画展の実行委員長をつとめる東京理科大学の北原和夫教授に話をうかがった。(JIFA理事・二階宗人)

□ 携帯電話やカーナビのGPSなど、理論の効果は日常生活にも

二階: 理論完成後100年たっても特別企画展が開催されるということは、この理論がいまも世界の関心を集めつづけているということでしょうか。

北原: そうですね。たとえば携帯電話や自動車のカーナビで使われているGPS(全地球測位システム)ですが、GPS衛星の時計に比べて地上の時計はわずかに遅れるのです。その意味は、地上での動きを衛星から見るとゆっくりしているように見えるということです。ちょっと計算してみると、100メートルの高さのビルの上から地上を歩く人を見ると、地上の時間は10のマイナス14乗だけ遅いのです。GPS衛星の場合は、10のマイナス9乗程度の遅れです。こうした時間の遅れを補正した上で、現在の自動車の位置を正確に知るように設計する必要があるわけです。これなどは相対性理論効果が身近なところに現われてきそうな一つの例です。人間が運転せずに走行する「自動運転車」の時代はもうすぐそこまで来ているのでしょうが、そこではGPSは不可欠なシステムですし、そのときは精度の高い位置情報が時々刻々必要となります。そうした開発技術の基本部分に相対性理論が活かされているということなのです。

□ 新しい理論は対話を通じて

二階: 世界を変えた理論なのですね。

北原: 一般相対性理論は自分たちが日ごろ当たり前だと考えていることを、もっと深いところで捉えなおすことを教えてくれたといえます。それともう一つ。アインシュタインは1915年11月に一般相対性理論を完成するさい毎週セミナーを開いて、他者の批判に耳をかたむけました。4週にわたる対話を通じてあの理論を練り、完成させたのです。いまの科学は個人の研究発表が中心で、すこしでも批判されないようにしている。だから逆にねつ造事件もおこるのです。しかし新しい理論というのは批判に応える対話や研究の共同作業を通じてこそつくられるのだと思います。今回の特別企画展では、アインシュタインのセミナーにならって、講演・討論のイベントであるサイエンス・カフェ「祝・一般相対性理論完成」を4週にわたって開催することにしました。

二階: 今回の特別企画展の意義をどうお考えですか。

北原: アインシュタインが特殊相対性理論など現代物理学の基礎をなす3つの理論を発表して100年となるのを記念して2005年に「世界物理年」のイベントが行われました。物理学を広く知ってもらうことがテーマでしたが、今回の特別企画展は趣向を変えて一般相対性理論が完成するまでの経緯や思索のプロセスをアインシュタインの手紙や資料で詳しく紹介するようにしました。一般相対性理論は本来あるべき科学教育・研究、あるいは学問の一つの姿を示している。ですから、今回はとりわけ理系の学生や教員、理数をめざす若者たちに来てもらって、一つの理論がどのようにしてつくられたのかを、資料をじっさいに自分の目で見て確認してほしいと思います。

二階: 企画展はアインシュタインの平和運動についても取り上げています。

北原: 核兵器の廃絶と科学技術の平和利用を謳った「ラッセル=アインシュタイン宣言」にアインシュタインは亡くなる直前に署名しました。原爆のすさまじい爆発力に彼の世界観は大きく変わったのでしょう。「宣言」への署名は彼の地上での最後の仕事になったともいえます。

二階: 特別企画展はヘブライ大学のアインシュタイン・アーカイブが保有する資料・史料のファクシミリを展示しています。

北原: ヘブライ大学の協力をえて、すばらしい企画展を開催することができました。イスラエルを何度か訪れていますが、最初は大学院時代の1972年です。キブツに宿泊したときのことをいまでも鮮明に覚えています。ナチス・ドイツの迫害を逃れてポーランドなどからやってきた人たちでした。彼らが理想に燃えて生活している姿に強い感銘を受けました。ただパレスチナ人にも友人がいるので、いまの中東の政情は残念でなりません。

北原和夫 >> 東大物理学科卒、ブリュッセル自由大学理学博士。東京工業大学教授、物理学会会長、日本学術会議会員を歴任。現在、東京工業大学名誉教授、物理オリンピック日本委員会理事長、東京理科大学大学院科学教育研究科教授。