ペサハの祝宴、セデル
ペサハの祝宴、セデル via SharonaGott

この時期のイスラエルの大きなお祭りといえば「ペサハ(過越祭)」ですね。出エジプトを祝い、そしてその時の苦難を忘れないためのお祭りとされているペサハ。今回はそのペサハについて簡単にご紹介したいと思います。

ペサハの由来

ペサハは英語では「pass over」、日本語では「過ぎ越しのお祭り」などと呼ばれています。この「過ぎ越す」とは何でしょうか?

「出エジプト」という出来事を知っている方も多いかと思います。モーセが、エジプトで奴隷として苦しんでいたユダヤの民を引き連れてエジプトを脱出した出来事です。

モーセは、エジプトの王に対しユダヤの民を自由にするよう訴えていましたが、王はその訴えに全く耳を貸しませんでした。そこで、神はエジプト王が承諾するまで様々な災いをもたらすことになります。「十の災い」と言われますが、旧約聖書の出エジプト期によれば次の通りです。まさに天変地異のフルコース、考えただけでも恐ろしいですね…。

  1. 水を血に変える(7:14-25)
  2. 蛙を放つ(8:1-15)
  3. ぶよを放つ(8:16-19)
  4. 虻を放つ(8:20-32)
  5. 疫病を流行らせる(9:1-7)
  6. 腫れ物を生じさせる(9:8-12)
  7. 雹を降らせる(9:13-35)
  8. 蝗を放つ(10:1-20)
  9. 暗闇でエジプトを覆う(10:21-29)
  10. 長子を皆殺しする(11章、12:29-33)

この10番目の災い、「長子を皆殺しする」というのが「過ぎ越し」の名前の由来になっています。というのも、皆殺しをする際にユダヤの民まで殺されては災いの意味が無いわけで、それを避けるためにユダヤの民は家の戸口に印をつけてその災いを避けたとされています。印をつけた自分たちの家は災いを受けなかった(過ぎ越していった)というわけで、「過越祭」という名前になったようです。

ちなみに、いったんはユダヤの民の解放を認めたエジプト王ですが、すぐに気が変わって軍隊でモーセたちを追い詰めます。海沿いまで追い詰められたモーセの前の海が割れて道ができた、というのが多くの人が知るあの有名なエピソードです。

今回はわかりやすくするためにあえて省略しているエピソードも多くあるので、興味を持った方は以下のページを覗いてみるのも面白いと思います。

参考

ペサハはどのようにして過ごす?

ペサハは、スコット(仮庵の祭り)、シャブオット(七週の祭り)とともにユダヤ教三大祭の一つとされています。また、創造主より毎年行う事が義務づけられているお祭りとあって、どんなに世俗的なイスラエル人も参加するというのも特徴の一つです。

セデルのテーブルセット
セデルのテーブルセット via slgckgc

ペサハでは、「セデル」という特別な祝宴が持たれます。旧約聖書の「出エジプト記」を読み語らい、子どもたちに今晩が特別な夜であることを体験してもらうこの祝宴。料理も、エジプト支配下の苦しみや、解放された時の喜びを表した食べ物である焼いた骨、卵、苦菜、青菜、甘いもののペーストなどが振る舞われます。

そしてペサハといえば何と言っても「マッツァ」。これは酵母抜きのクラッカーの様なパンで、「エジプトから脱出する時パンを発酵させる時間もない程急いでいた」ということにちなんで食べるようです。ペサハの期間中は基本的に主食はこのマッツァのみとなるため、あまりコシェルを厳格に守らないイスラエル人の中には1週間分のパンを事前に買い込む人もいるとか。

それと、セデルでは4杯以上のワインを飲まなければいけない(!)という決まりもあります。この4と数字には、エジプトから連れ出す、労役から救い出す、贖う、ヤハウェの民となるという4つの約束という意味が込められているそうです。下戸にはちょっとつらい(?)、酒飲みには嬉しくて仕方がない(?)決まりですね。