アル・コル・エレ(これらすべてのことを)

蜜のごとき甘きこと 刺のごとき苦きこと
生まれたばかりのわたしたちの娘を
わたしたちの最善の神様 守ってください。
燃え上がる炎 澄みきった水
遠くから家路につく人を 守ってください。

(繰り返し)
これら全てのことを 
わたしの最善の神様 守ってください。
蜜のごとき甘きことも 刺のごとき苦きことも
どうか 植えられたものを抜かないでください
どうか その希望を忘れないでください
わたしを帰してください
わたしは善き 約束の地に帰ります

ナオミ・シェメルが今ある人生・イスラエルの国運を思い、歌う

この歌はナオミ・シェメルが、伝道の書第三章の言葉、「植えるに時あり、植えたものを抜くに時あり、笑うに時あり。悲しむに時あり、踊るに時あり」の思想を受けて、今ある人生(またイスラエルの国運)を思い、そこに信仰と希望と愛を歌った祈りの歌です。

しかしもともとは1980年、主人に先立たれたナオミの妹ルティを慰めるために作ったものでした。

歌詞中の「どうか植えられた物を抜かないでください」が当時シナイ半島返還反対のシンボルとして使われました。反対陣営は、彼らのための応援歌だと解釈し、ナオミ自身もそれに対して否定はしませんでしたが、ナオミの親友である女優リフカ・ミハエリの見解は異なっています。

女優リフカ・ミハエリは言います。

ナオミの作った歌の経歴というものは実に興味深いです。現実の物事が起きるより先に、歌の中にすでに現れて、あたかも歌が予言しているかのごとく感じる事が幾度かありました。

現実と渾然一体になりながら、歌独自の予言の方向へと進んでいきます。さらなる予言の前触れのようです。

それはちょうど、砂漠の舟とたとえられる、ふたこぶらくだの隊商が蜃気楼のように現れては消えてゆくように、この歌が内的な光を放ち、そして次の瞬間には影へ遠ざかる。その刹那に私は魅せられています。  


この記事を書いた人

村上義弥
1960年生まれ。1983年~1984年イスラエルに留学し、イスラエル音楽に心惹かれるようになる。1996年、ナオミ・シェメル、エフード・マノール、ドヴ・ゼルツェル氏等、約30名のイスラエルの音楽家を半年間かけて取材。その後も2003~2006年、2008年と続けて音楽家取材でイスラエルを訪問する。またイスラエルのギター奏者の第1人者オーリー・ハルパズ氏よりギターを習得。現在広告代理店勤務。