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大野新会長と秋山前会長

日本イスラエル親善協会(JIFA)は5月30日に総会と理事会を開催し、会長交代を行った。3年間代表理事・会長を務めた秋山哲氏が退任し、大野功統(よしのり)氏が新たに代表理事・会長に就任した。新執行部の発足にあたって新・前会長が日本とイスラエル関係の現状、JIFAの今後の在り方などを話し合った。

新会長・前会長がイスラエルと関わるようになったきっかけは

秋山 大野さんは衆議院議員を8期お務めになり、長く日本イスラエル友好議員連盟の会長として活動されていましたが、イスラエルとの関係で印象深い出来事を話していただけますか。

大野 1995年に初めてイスラエルを訪問しました。当時私は自民党の国防部会長で、ゴラン高原に自衛隊を派遣するかどうか判断するためです。UNDOFというシリアとイスラエルの兵力切り離しを監視する国連派遣の部隊を訪ねたのですが、オランダ人の隊長は日本の自衛隊に何ができるか、という態度でした。しかし、自衛隊派遣後にこの隊長が日本に来た時、日本の自衛隊は素晴らしいと、すっかり評価が変わっていました。

ラビン首相にも会いましたが、その発言は強く印象に残っています。「日本は幸せな国だ、平和を維持すればよい。イスラエルは平和を作らなければならない。平和を作るのには血を流さなければならない」と言って悲しい顔をしました。彼は数カ月後に凶弾に倒れますが、国の安全と平和を守ることに真剣に取り組む国だということがよく分かりました。

街の中でも、若い女性兵士が銃をかついで歩いています。それも明るい表情で。安全保障に対する国民全体の意志の強さが現れていました。

パレスチナ側にも行ってアラファトPLO議長に会いました。パレスチナ人の家を訪ねた折、その家の女性が、日本の援助で屋根が直り、雨もれがしなくなって助かっています、と感謝してくれました。

秋山 政治家になられる前は大蔵省(現財務省)にお勤めですね。

大野 大蔵省に約20年勤めてから香川県知事選に出馬して敗れ、8年間浪人しました。「桃栗3年、柿8年、早く目を出せ大野さん」と励まされながら衆議院議員に当選させてもらいました。ところで秋山さんはJIFAにいつから関係してこられたのですか。

秋山 理事になったのが1998年です。それ以来、副会長13年、会長3年ということになります。

大野 イスラエルへのご訪問は?

秋山 最初は1979年、40年近く前のことです。新聞記者としての取材でした。イラン革命の直後で、イスラムが盛り上がり、中東全体がどうなるか注目された時期です。突然に近い訪問だったのですが、イスラエル側の対応はよかったですね。外務省も軍も丹念に説明し、案内してくれました。キリスト教の世界にいる人間としては、イスラエルへ行くと高揚感というか、特別の感情が湧いてくるもので、今も取材旅行の記憶は鮮明です。

チャレンジ精神、イスラエルに学ぶ

秋山 お互いにずいぶん昔の話をしていますが、最近、日本とイスラエルの関係は大きく動いてきましたね。

大野 要人の往来が盛んになりました。一昨年にイスラエルのネタニヤフ首相が来日、昨年は安倍首相がイスラエルを訪問されました。経済界では今年、経済同友会の小林(喜光)代表幹事が視察団を率いて行かれました。

イスラエルから学ぶことはたくさんあるのです。日本は人口減少に直面しているのに対してイスラエルは人口が増えています。食料自給率も日本が低いのに対し、狭い国土のイスラエルはとても高い。研究開発にGDP(国内総生産)の4%も5%も割いている。ITなどの成長分野に力を入れる国の姿勢はすばらしい。

秋山 一人当たりGDPは日本を追い抜きました。

大野 なによりチャレンジ精神を学ぶべきです。失敗しても許容される文化。こういった国としての在り方を学ばなければなりません。日本の若い人のチャレンジ精神が薄れてきているのは大変なことです。

両国関係は良好、タイミング大切に。 / 人間同士の交流が「平和の力」を生む

秋山 今年はJIFA創立50週年なので、その歴史を調べたのですが、初めのころ両国関係はうまくいっていてJIFAの活動も盛んです。1973年の第4次中東戦争と石油ショック、アラブによるイスラエル・ボイコットによって状況が変わり、日本全体がアラブ寄りになります。JIFAの活動も影響を強く受けました。先ほど言われたように、近年両国関係が好転していますので、このタイミングが大事です。JIFAは活発に活動しなければなりません。今回有力な政治家を会長に迎えて発言力を強化し、副会長陣も増員して執行体制を整えたのは、さまざまな分野で活動できるJIFAにしたいからです。

大野 タイミングは言われるとおり重要です。一番の問題は人間同士の交流でしょう。政治、経済、文化各分野でイスラエルに興味を持つ人、交流を促進する人々に参加してもらいたい。国の安全保障には防衛力、外交力が大切ではあるが、人間の交流が安全保障の底力だという信念を私は持っています。「人間の絆はピース・パワー(平和力)」といってよいでしょう。相互の理解が進んでいけばビジネスであれ、研究開発であれ大きな成果が生まれるのではないですか。

両国の将来にらみ魅力ある活動続ける

秋山 日本の企業はイスラエルを重視してこなかったですね。マーケットとして小さい、資源の点から見てもアラブの方が大事と考えてきましたが、今やイスラエルの技術に目を背けていては世界の潮流から取り残されます。欧米はもちろん、中国も韓国もイスラエルの技術、企業をどんどん買収している。JIFAは声を大にしてこの点を訴えていかなければなりません。

もう一つ大事なのは、若い人たちの顔をイスラエルに向けることです。イスラエルのジャズとかファッションなどは若い人たちの強い関心を呼んでいます。イスラエルでは日本のポップカルチャーが大人気です。国際情勢とか政治などとは別に、若者文化の交流が活発になっていくことは両国の将来にとって望ましいことです。それに情報発信が大事です。特にウェブ。

大野 同感ですね。

秋山 やらなければならないことはたくさんありますが、JIFAの力が必ずしも十分ではないという課題もあります。役員は皆ボランティアですから、全員一生懸命にやっても限界があります。会員の会費で運営しているので、資金的にも限度があります。

大野 われわれのような団体はボランティアで支えるのが当然で、会員を増やす、サポーターを作っていく、というのが本道です。それ以外にありません。魅力のある活動を展開していくことに尽きる。先日のイスラエル「独立記念の夕べ」のような素晴らしい行事や集いを重ねていくことが大事で、皆さんともども頑張ってまいります。

この記事を書いた人

日本イスラエル親善協会 事務局