イスラエルのお正月「 Rosh Hshannah」とは

by 筆者

シャナトバ!これはヘブライ語で「良い年を!Shannah Tova!」という新年の挨拶です。

イスラエルでは、ユダヤ暦の新年祭の時期になぞらえて、9月〜10月頃に新年を祝います。

ロシュハシャナは元旦の2日間を示しますが、その後の連続した祝日を示すこともあります。10日後の「ヨムキプール Yom Kippur」までの連続した祝日を「畏れの日々 Yamim Nora’im」としており、イスラエルでは長期の連休となることが多いです。(注:伝統的なユダヤ歴において、1日は日没から次の日の日没までと考えられています)

日本では元旦において、抱負を語り、未来について願うことが多いですが、イスラエルでは一年を振り返り、内省や贖罪することで新しい一年を迎えるという意識があります。

この時期はイスラエルの学校や職場も休みになり家族旅行なども増え、ユダヤ正統派の中には聖地巡礼をする人も。

りんごとはちみつ、ザクロ

りんごとハチミツといえばロシュハシャナ!というほど、新年を代表する食べ物です。あまいりんごとハチミツを食べることで、「シャナトバ・ベメトカ 新年が甘くなりますように」と素晴らしい一年になるように祈ります。この時期になると、「イゲレット・シャナトバ」と呼ばれるグリーティングカードを送る文化があります。親戚や友人などに送りますが、近年はSMSの発達とともにメッセージで送ることも多いようです。

この時期に食べらる伝統的な料理には、それぞれ意味が込められています。

日本の「おせち料理」との共通点も多く、どれも美味しそうです!

・りんご    豊穣

・はちみつ   「甘い」一年を願う

・魚の頭   年の頭(コイ、テイラピア、マスなどが多い)

・ザクロ   子宝にめぐまれ、子孫繁栄

・丸い編み込みパン 一年を通した季節の移り変わりを象徴

正月の音:ショファール

イスラエルのお正月といえば、ショファールの音です。町中のシナゴーク(ユダヤ教の会堂)からお祈りに合わせてショファルの音がこだまのように響きます。ショファールとは、牡羊の角から作られた、伝統的な楽器です。トランペットのように、唇を振動させることで音を奏でます。

ショファルの音色には、大きく3種類ありそれぞれ意味があります。

「テキアー Tekiah」 単一長音:注目を集める音

「テルアー Teruah」8回の連続した短音 (スタッカート):悲しみの音

「シェヴァリム Shevarim」低い長音→高い長音:境界線を示す音、破壊の音

これに「大テキアー」(大きな長音)を合わせ、お祈りに合わせて繰り返し演奏します。

My Jewish Learning

あとがき

以上イスラエルの伝統的な正月:ロシュはシャナを紹介しました。

日本のお正月との共通点も多く大変親しみやすい祝日だと思います。この時期になると、りんごとハチミツを使ったケーキやデザートがたくさん食べられるので、イスラエルでも人気の祝日の一つです。また、秋は収穫の時期でもあり、新年を祝うとともに豊穣を祈るという意識もあるようです。一年が秋の収穫から始まるというのは大変興味深いですね。今回は、もっともメジャーな文化を取り上げましたが、欧州系ユダヤ人、ロシア系ユダヤ人、東欧系ユダヤ人、中東系ユダヤ人など、様々な地域でそれぞれ少しずつ異なる文化があり、祝日の様子も多様性に溢れています。近年はそれぞれの文化が少しずつ混ざりあい、またインターネットの発達もあり、お正月の過ごし方も変容しているようです。

今年イスラエルでは、感染の多い地域のみ連休中のロックダウンが決行されることになりました。新しい生活様式が必要となる中、伝統と柔軟さを保ちつつ、素敵な祝日となることを願います。

  • この記事を書いた人

    下瀬美幸
    早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科4年国際行政学ゼミ所属。アンネの日記からユダヤ文化に興味を持ち、イスラエルパレスチナ問題、ヘブライ語などを勉強している。日本とイスラエルの相互理解を深め、文化的交流を活性化したいと考え、JIFA学生部会の再始動をすることに!来年、イスラエルで就職することを計画中。