エルサレムの中心部、独立公園のそばにスーパーソルという名の大きな食品スーパーマーケットがある。初めて入った時、正面突き当りの大きなガラスケースの中に、量り売りの白い固まりがたくさん並んでいるのを見つけた。
「エルサレムにお豆腐がこんなにいっぱい!」と思ったのも束の間、それらは全部チーズだった。木綿や絹、湯葉や寄せ豆腐ではなく、フレッシュチーズのモッツアレラからハードチーズのグリュイエールまで、様々なチーズの量り売り。日本のスーパーのお惣菜売り場におかずがたくさんあるのと同じ感覚で、種類も質も量も様々なチーズが並んでいた。
まさに「乳と蜜の流れる地」の国の人らしく、イスラエル人はチーズがとても好きな人たちだ。
私は、そのたくさんのチーズを使いこなすことは出来なかったが、ハーブ入りのクリームチーズは気に入って、昼食のサンドイッチによく塗って食べていた。日本でもあんな美味しいクリームチーズがあれば、サンドイッチのマヨネーズ代わりに普及するのではと今でも思い出している。
それにしても私は、よほどチーズを他の日本食品と間違えるのが得意らしく、昔ロンドン旅行中、スーパーの和風お弁当売り場のそばに並んだモッツアレラチーズを袋入りのつゆ付き温泉玉子と間違えて、お弁当といっしょにいそいそ買って帰ったことがある。ホテルで封を開けてがっかりしたものだ。その当時は袋入りの水分漬けモッツアレラチーズというものを知らなかったのである。
そしてチーズを間違えてぬか喜びした豆腐であるが、エルサレムにはその名も高き「エルサレム豆腐」という名前の本物の豆腐が売っていたのである。日本の製法から学んだ純エルサレム産と聞いている。少し固めの木綿豆腐だが味はしっかり美味しいお豆腐だ。食感は冷奴で食べるより、スープや炒め物に向いていた。
マハネエフダという大きな市場のそばにある自然食品店でいつも買っていた。丸い形のタッパーウエア入りで、一丁が200円くらいだったと思う。イスラエルの人たちもよく買っており、「エルサレム豆腐」がお料理の素材として定着し始めていたようだ。
イスラエルはチーズがおいしい国であるが白いお豆腐もいける国である。
著者プロフィール : 石田 恵子 (いしだ・けいこ)
1995年から1998年まで、夫の転勤に伴いエルサレムに滞在。現在埼玉県在住の主婦。