14年ほど前のこと、夫の転勤でエジプト・カイロに1年住んだ後、エルサレムへ異動することになった。

下見に訪れた2月のエルサレムの街で、私は桜に似た白い美しい花をつけている木々に目を奪われた。

公園、庭先、街角のそこかしこに咲き誇っている。

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灼熱のカイロでは見られない「春を告げる花」だと直ぐに感じた。イスラエル人に聞くと、アーモンドの花だという。

私はアーモンドの花を始めて見た。

五弁の花びら、枝ぶりは桜とはまるで姉妹のようで、日本の春を懐かしく思い出させてくれた。カイロでは感じることのできない春の予感だった。

後で調べると、桜と同じバラ科の落葉高木。またヘブライ語ではアーモンドのことを「シャケード」と言い、それは目覚めを表す「シャッカ」という語源からきていて、春の目覚めを意味するとも聞いた。

しかし、その後数年住んだエルサレムで、満開のアーモンドの花は見たけれど、はらはらと散る花びらは覚えていない。桜のように風に吹かれて舞い散るという姿はなかったように思う。

春は告げても、日本の桜のように「しず心なく 花の散るらん」という短命への美意識を育てる散り方はしていなかったようだ。

その散り際の粘り強さに、私はこのイスラエルという地域の人々の強い二枚腰を、その当時勝手に重ね合わせていた。

日本でも最近たくさん植樹されているようだが、私にとってはアーモンドはずっと2月のエルサレムの春告花である。

著者プロフィール : 石田 恵子 (いしだ・けいこ)

1995年から1998年まで、夫の転勤に伴いエルサレムに滞在。現在埼玉県在住の主婦。

この記事を書いた人

日本イスラエル親善協会 事務局