こんにちは!皆さん、GWをいかがお過ごしですか?学生部会部会長の松村悠太郎です。
さて、今回はインタビュープロジェクト第3弾ということで、イスカル社の岡田一成さんにインタビューしました。現在イスラエル在住ということで、Skypeでのインタビューとなりましたが、現地にいないと分からない生の情報が盛りだくさんです。
イスカル社はイスラエルの北部テフェンに本社をおく世界第2位の切削工具メーカーです。日本にもイスカルジャパンとして展開をしています。
今回インタビューを受けていただいた方
岡田一成(おかだかずなり)さん
イスラエルの切削工具メーカー、イスカル(ISCAR LTD.)の日本法人、イスカルジャパン(株)勤務。20年以上に渡るイスラエル生活の中で、日本・イスラエル間のビジネスサポートにも従事し、日本人として初めてイスラエル日本商工会議所理事に選出されるなど、幅広い活動を行っている。
イスラエル北部に移住したドイツ系ユダヤ人による「もの作りの技術」
1. あまり私たち学生には馴染みのない切削工具のメーカーということですが、具体的にどのようなものなのでしょうか?
切り屑を生成して加工する工具を、切削工具と呼びます。一般的に機械加工には、切削加工、研削加工、塑性加工、特殊加工の四つに大別されます。
切削加工は、具体的には、穴をあける、円筒に削る、平面を削る、溝を削る、ねじを削りだす等の加工。加工内容に応じ、旋盤、フライス盤等の工作機械につける工具が、切削工具となります。これらの工具を製作するメーカーが切削工具メーカーです。
2. ハイテク、ITのイメージが強いイスラエルですが、モノづくりの面でのイスラエルの強みや特徴に関して教えてください。
イスカル社の切削工具
今やイスラエル経済の牽引役トップとなっているハイテク、IT産業は、90年当初の政府中心のイニシアチブにより興業された比較的新しい産業です。それ以前はイスラエルはキブツが代表例の農業国でした。
それと同時に、イスラエル北部(ハイファ以北)に建国当時より住み着いたドイツ系ユダヤ人は、特に「もの作りの技術」の経験と知識を持った人たちでした。その「もの作り系移民」が、建国当時より軍需を含めた国内もの作り産業を支えたのです。
現代のハイテク、ITが旧ソビエトからの優秀なITエンジニアの知識がベースとなっているのと同じく、イスラエルのもの作り技術は、ドイツ移民のエンジニアをベースとして繁栄したと言えるでしょう。
今日に至るまで、イスラエル北部には、イスカル社を初め、世界で有名なもの作りメーカーの工場が存在します。その中でも、イスカル社は、もの作り技術とイスラエル流イノベーションを融合させた製品開発力で世界市場で業界トップ(2位)の地位を確保しています。
3. イスカル社が日本に来た契機、展開状況などを教えてください。
テフェンにあるイスカル本社
イスラエル北部に本社を持つイスカル社は、製品輸出比率が99%以上と非常に高く、輸出先は世界80ヶ国以上に及びます。
中でも、製造業において高い技術力を持つ日本で認められる事は、イスカル社の大きな発展につながると当初より考え、80年代には
既に日本市場にその製品を販売し始め、1994年には100%出資の日本法人・イスカルジャパン(株)を設立致しました。
イスカル社は、イスラエル本社の独創的な優れた製品により、日本国内でのマーケットシェア拡大を目指しております。そして、徹底したユーザー様を重視する姿勢のもと、日本の製造業全体の生産性向上とコストダウンに貢献出来ることを目標に活動しております。
4. イスラエルの会社はイスラエル自体のマーケットが小さく、海外進出することが多い気がするのですがどうなのでしょうか?
確かにイスラエル自体のマーケットは非常に小さく、価値の高いノウハウを外に進出するしかないです。イスカル社も国内でのマーケットシェアは80%以上を占めていますが、全体の売り上げで考えると1%ほどです。
イスラエル日本商工会議所の理事に、日本人として初めて就任
5. 岡田様のイスラエル、イスカル社との関わりについて教えてください。
私は1994年5月、イスカル社の日本法人設立時に入社。その後入社1年目にはイスラエルの本社工場から日本における販売、営業活動をサポートするために、イスラエルへ移住しました。
イスラエル赴任当時から、イスラエルにおける日本企業の数の少なさ、日本とのビジネス、経済関係の希少さを目の当たりにし、「何とか両国のビジネスを広げたい」という思いをもっていました。
欧米を中心としたマイクロソフト、グーグル、サムソン等世界のグローバルテックが開発拠点をもつ傍ら、日本企業のイスラエル国内での活動が全くないことが異常にさえ思えました。
そのような状況の中、先ずは自分にできることを行動にしたいという思いから、2009年にテルアビブ本拠地のイスラエル日本商工会議所の役員選挙に立候補しました。そして、日本人初めての理事に選出されました。
近年、両国のビジネス、経済関係は、発展の一途で、2014年の茂木経産大臣訪問、経団連派遣団訪問、昨年1月の安倍首相訪問のお迎えを商工会議所役員としてお世話することもできました。
今年5月には、長年のイスラエルでの仕事を終え、日本法人イスカルジャパン(株)大阪本社へ帰任します。今後はイスラエル生まれのイノベーションを生かした独創的な商品を、日本でご紹介する立場になります。
6. もともとイスラエルに興味があったのですか?
大学時代に国際関係論を専攻していたことから、イスラエルについて勉強をしていました。学生時代にも2度ほど訪れたことがあります。
7. 20年ほどイスラエルに住んでいらっしゃるということですが、生活するにあたりイスラエルはどうですか?
イスラエルは生活環境として非常に良いと思います。確かに日本は便利であり、生活レベルとしては非常に高いです。しかし、イスラエルと比較すると生活の質はどうかな?と思います。
イスラエルは自然や、人と人との関係を非常に大事にしています。今月末から私はイスラエルでの生活を終えて、大阪に暮らすことになるのですが、そうしたイスラエルの良さは日本でも広めたいと思います。
関係強化のためには、関心強化。一般市民がもっとイスラエルを知ることが重要。
8. イスラエルと日本の関係強化のために必要なことはなんでしょうか?
日本の経済界も去ることながら、日本の一般市民がもっとイスラエルという国を知ることでしょう。
日本はイスラエル建国後アジア諸国で最も早くイスラエルと国交を樹立した国ですが、依然「イスラエル」のいろはを知らない人が多い。「関係強化」というより、先ずは「関心強化」でしょう。
インターネット、SNSも盛んな今、関心さえあれば、知る手段は幾らでもあります。相手(イスラエル)を知ることが必要です。
9. 「関心強化」とおっしゃりましたが、具体的にどんなところを知ってほしいですか?
経済関連に関しては日本でも経済同友会が視察に訪れているなど、関心は高くなっているでしょう。もう一つ重要なのは一般の日本の方々への関心強化です。
イスラエルは観光面で旅好きの日本人には非常に魅力的な国かと思います。地中海、ガリラヤ胡、死海、北ガリラヤ地方などの自然豊かな場所や、夜でも眠らない街テルアビブ、ロシア、中東、北米など様々な食事などなど多くの面で非常に楽しむことができます。
言語も英語、ヘブライ語に加えて最近はフランス語を話す人が増えています。
話が逸れますが、これはフランスで起きているテロによるものではないかと考えられ、フランスに住んでいたユダヤ人の多くが最近、イスラエルに引っ越ししてくるケースが多いです。フランスにいるよりもイスラエルの方が安全と考えているのだと思います。
10. 岡田様自身、関係強化のために取り組まれていることはありますか?
私はイスカル社、イ日商工会議所の活動以外に、「世界の常識を、日本の常識に!」をスローガンにしてイスラエルのイノベーション、技術、エコシステム、人材育成手法等を日本の方々に知って頂く活動を行っています。
イスラエルに訪問される日本企業の方々に対し、当地での商談アポ、その他各種サポートも行ってきました。イスラエルの魅力は多く、いくら活動範囲を広げても不充分なくらいです(笑)それだけ日本とイスラエルの関係は、まだまだ発展の余地があるということでしょう。
11. 学生間の交流に関して求めることはなんですか?
兎に角、人と人の接点を持つことをお勧めします。
イスラエル人は特に、会って初めてその魅力が分ります。又、日本人もコミュニケーションが苦手な分、相手に会ってもらって初めて得意とする「繊細な配慮、対応」、「おもてなし」の心が分って頂けると思っています。
兎に角、イスラエル人は日本に来る、日本人はイスラエルに行く、人的交流でしょう。今までの経験から、双方の国を訪問した人は、99%の確立で驚きと共に、不思議なくらいの愛着心をもたれています←これ、本当です!
インタビューを終えて
イスラエルで20年ほど仕事をされている岡田さんのお話はそこに住んでいないと分からない新鮮な内容でした。特にフランスに住んでいたユダヤ人がイスラエルでここ最近増えているということで、ユダヤ人の方々にとってのイスラエルの大きさを改めて感じました。訪問計画の際には、ぜひイスカル社を訪問したいと考えております。
この記事を書いた人
- 学生部会部会長。青山学院大学教育人間科学部教育学科4年。高校3年生の時に被災高校生代表としてイスラエルに訪問。現在は、青山学院大学ボランテイア・ステーションで東北復興ボランティア活動に従事。イスラエルと東北を繋げることを目標に学生部会の部会長として活動中。
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