シャローム!学生部会の中山智之です。

今回はイスラエルのスタートアップ企業と提携しWebマーケティング支援事業を行う、株式会社ギャプライズ(以下、ギャプライズ)さんを訪問しました。甲斐亮之代表取締役社長(以下、社長)にお話を伺いました。

ギャプライズ甲斐社長と

Q: 本日はよろしくお願いします、社長!まず御社の概要を教えてください。

ギャプライズは2005年に創業したWebマーケティング支援企業です。現在では受託事業と代理店事業を行っています。

受託事業ではお客様のホームページやランディングページ(LP)を作り、更に運用型広告を中心としたWeb集客によりエンドユーザを集めます。

一方、代理店事業では、主にイスラエルスタートアップ企業のツールを日本企業に紹介し、導入していただく仕事をしています。現在ギャプライズで扱っているツールのうち代表的なものは、Clicktale社、SimilarWeb社、Optimizely社、WalkMe社、Yotpo社という異なる5つのスタートアップ企業が開発したデジタルマーケティングツールです。

(各ツールの詳細な説明は本記事では扱いません。興味がある方は、 http://www.gaprise.com/service/ をどうぞ)

Q: 御社の創業から現在までの変遷を教えてください。

創業からしばらくは受託事業をしていました。お客様の電子商取引(EC)サイトの売上を上げるための対策を考え、実行することが中心でした。例えば10万円の広告で1000人集まったとすると、その1000人の中からできるだけ多くの人に買ってもらうにはどうすれば良いかを考え、実際にアクションして効果を見ていきます。

ギャプライズ甲斐社長
株式会社ギャプライズ
代表取締役社長 甲斐亮之様

2005年当時はLPという言葉自体日本にはなかったのですが、やっていたことは同じです。当時は商品ページという言葉でしたが、良い商品ページを作ることで転換率(CVR)が上がり、売上が伸びる。結果としてROIが向上します。

だから2006年にアメリカからLPという言葉が入ってきたときに、これって創業期からゴリゴリ頑張ってきたことじゃないかと。ということで、2007年の頭からLP制作サービスを始めました。

この頃から
「LPは日本一です!」
「え、どうして日本一なんですか?」
「気持ちです!気持ちでは絶対負けません!」
という段階から頑張ってきました。そのうちどんどんお客様の数も増えてきて、成果も上がってきました。現在では、「日本一」に近づいてきたかな、と思います。

(注)
CVR: サイト訪問者が、申し込み・問い合わせ・注文・会員登録・資料請求などのアクションを起こすことをコンバージョン(CV)といい、全サイト訪問者のうちCVが発生した割合のこと。
LP: 検索エンジンや広告を通して訪問する最初のページ、又はCVを促すためのページのこと。

なぜ売れた?の疑問から始めた開発、そして…

ホームページ制作の際には仮説を立てます。ターゲット像とか、サービスの強み、エンドユーザが欲しているメッセージ、そしてこの商品とこのエンドユーザを結びつけるにはどのような発信をするのが効果的なのか。

例えば100人来て、5人買っていったとすると、CVRは5%。これが10%になるだけで単純に効果は倍増するわけです。5%を10%に上げる仕事はすごく力を入れていて、結果も出ました。僕らが作るホームページはすごく効果が良く、日本一と評価していただけることが多いのです。

しかし、なぜ売れたのか、どういうプロセスで売上に繋がったかの分析が難しかった。言い換えれば5%から10%という変化は、どういうプロセスを経た結果なのか、どの仮説が正しかったのかという検証ができなかった。定性的ではなく定量的に分析できなければ再現性はないのです。

そこで、そのプロセスを可視化したいと、創業期のお金も人も足りない状況で、2年近くかけて開発しました。

ところがようやくローンチできるというときに、たまたま海外のWebマーケティングの記事で、初めてClicktaleという企業・ツールを知りました。

Clicktale社はイスラエルのスタートアップ企業だったのですが、これすげえなと。敵わないと。正直に思ったのです。自分たちがやろうとしていることが既に製品として存在していて、更に僕らがその時に考えもしなかったような形で数歩先まで実装がなされていたのです。

当然自分たちの製品を売るにこしたことはないのですが、自分たちが作ったものよりも良いものが既にあるのを知った以上、その日のうちに自分たちは開発をやめ、Clicktaleを日本の企業に導入しようと決めました。これが代理店事業の始まりです。

Clicktaleを実際に日本企業に導入すると、初年度から効果が出ました。すると、シリコンバレー同様イスラエルもすごく人材の流動性って高いのですが、Clicktale社から転職した方が新たにスタートアップ企業を立ち上げて、「うちのもやってくれ!」と。

テルアビブって小さい街なので、ベンチャーやスタートアップ企業はトップ同士が友人です。

「ギャプライズがやってくれたぜ!」
「じゃあうちも!」
「じゃあうちも!」
と口コミで広がりました。

こうしてClicktale社の次にSimilarWeb社、Optimizely社、Yotpo社、WalkMe社とも代理店契約をしました。Optimizely社は元GoogleのDan Sirokerという方が作ったシリコンバレー発のスタートアップ企業ですが、それ以外は全てイスラエル発です。

現在は多くのスタートアップ企業と提携、又は提携のための交渉をしています。また、駐日イスラエル大使館からも、どこどこの企業が日本での可能性がないか調査してくれと相談されることもあります。

自分たちで開発を頑張ったからこそClicktaleのすごさが分かったと思っています。逆に自分たちで開発しなかったら多分分からなかったですよ。

代理店になるという視点はどの会社も持てるはずですが、僕らがそこにチャンスを見出し、実際に動いたというのはもう間違いなく、自分たちで開発してきたからこそですよね。

一気通貫

Q: お仕事の流れを教えてください。

神田明神
神田明神の鳥居をくぐってオフィスへ

基本的には問い合わせをいただいてから動きます。自社でマーケティングについて問題を抱えるお客様から、多いときには月1000件位。

問い合わせが来るための仕掛けをしています。例えばブログを書いたり、広告を選んだり、ホームページを切り替えたり。

こうしたマーケティングを重ねて、問い合わせが来るとセールスの出番です。電話やメールを使ったインサイドセールスをしたり、お客様の元へ足を運ぶセールスを行ったりします。そして技術的な部分を含めてお客様にしっかり説明をします。

実際にご契約いただいた後は、コンサルティング担当が技術移転やトレーニングといったサポートを行います。

ところで、積読ってありますよね。本を買っても読まなかったりするじゃないですか、実はビジネスでも同じことが起こります。導入すると成果が出た気になって、使わないんですよ。

我々としては、年間契約で来年以降も継続して使っていただきたいわけです。そのためカスタマーサクセスチームという部署がお客様の使用状況をモニタリングし、基本的に1週間利用していなかったら連絡を差し上げ、サポートできるような体制を整えています。サポート体制は盤石です。

Q: セールス時に注意するべきことを教えてください。

ツールの機能が100あるとして、この機能100あります!と売るのは二流です。あるお客様は100のうちこの15を使いたい、また別のお客様は100のうちこの10を使いたい。

当然機能としては全部揃っているけれども、この機能が必要ではないかとか、この機能を使うことでお客様のビジネスにスケールしますよ、成果上がりますよ。というやり方が必要です。お客様それぞれの目的とかビジネスモデルに合わせるのです。そのポイントを見つけて、提案することが大事です。

あとは、どんなにすごい製品だなあというものも、結局日本のマーケットにフィットしなければ売れないのです。例えば欧米では10万社導入しているというものでも、日本ではそもそも概念が通じないとか。種類にもよるけど、大体3年から5年は遅い。すごく良いものだからといって売れるわけではない。その見極めが重要になってきますね。

Q: Webマーケティング系の他社と比較した御社の強みを教えてください。

ギャプライズロゴ
Gap + Surprise + Rise = GAPRISE

人力×Techです。ツールなんて所詮ツール。ツールの導入はただの手段。データも同様で、データはどう使うかが大事。ツールをどのように活用してお客様が利益を出すかが大事なわけです。そういう意味で単なるベンダーではなくて、使い方もお伝えできる。最先端のマーケティングテクノロジーだって、使い方によっては役に立たないことが多いです。

それに創業時から受託事業を泥臭くやってきたんです。最先端のテクノロジーと泥臭くやってきた人力の積。

また、受託事業で、制作はここが競合だとか、こういう風になりたいなあとかサービス単位ではたくさん競合はありますし、ツール毎でも競合はあるので試しに使用してみることはあります。

しかしギャプライズとしての競合は、少ない。こんな会社、意外とないんですよ。

ITと宝石

Q: イスラエルはスタートアップ大国と称されますが、その観点で、社長の考える「イスラエルにあって日本には足りないもの」は何ですか。

「危機感」です。日本の平和はあって当たり前。今の平和って何の上に成り立っているのかあまり考える機会はないと思います。

イスラエルは真逆です。自分の国を自分で守るという感覚が備わっています。この違いはすごく大きいなと思います。

彼らは迫害の歴史の中で、小さくて価値がある物、持ち運びしやすくて価値がある物に重きを置いてきたのではないかと思います。それは技術だったり知識だったり、ないし宝石とかですよね。ITも当てはまります。教育に力を入れるのもそう。いかに知恵をつけるか。そういう発想は好きです。非常にロジカルですよね。

もっともビジネスではロジカルではないこともたくさんあります。とにかくスピードを求めたりとか、小さいことにこだわらなかったりとか。そのため0→1はすごい早いしすごいなと心から思います。しかし、細部にこだわり完璧を求めて丁寧に進めていくフェーズにおいては、日本は圧倒的だとも思います。どの国を見てもここまで完成度の高いものを求める国ってないのではと思います。ただ、個々の潜在能力は大きく違うとは感じていないですね。

また、イスラエルは内需がない。いかに外に価値を提供していくかを、めちゃくちゃ真剣に考えています。危機感が、スタート地点が、大きく違うなあと思っています。そういう意味で、一緒に協業するのは、大きな刺激を受けることができるので、素晴らしいことだと思います。

Entertain the world

Q: 社長のやりがいを教えてください。

ギャプライズ待合室
社内の待合室

会社や社員の成長を実感することです。例えばあるチームの副部長は、中卒で5年前に入社しました。当時はWebなんて全く知らない、っていうところからスタートして、今では立派に数字も出して、メンバーを引っ張っています。必死に仕事に食らいついて、刺激を受けて。で気がついたら圧倒的に成長していたわけです。それを見るのが何よりの楽しみ、やりがいですよね。すごく幸せです。

Q: では、社員が成長したり結果を出せるようにするために、会社として取り組んでいることを教えてください。

こういうのがあれば良いな、ここ改善して欲しいなというものを社員に気軽に提出してもらう制度があります。

提出されると1週間以内に検討・判断します。意見がすぐ検討されて形になれば、言ったことをきちんとやってくれるんだなあ、意見が通るんだなって。社員のやる気につながります。

逆に出てこなくなったら、会社としての成長が止まってしまうと思っています。そのため出てきた意見に対してはすぐ検討して、判断する。すごく気をつけている点です。

分かりやすい例を挙げると、英語に力を入れたいので補助金を出して欲しいという申請がありました。もちろんすぐに採用して、毎月ある程度の額のスクール代を出すようにしました。今後はヘブライ語も出るかもしれませんね。

Q: 風通しが良いということですね。では社員に求める能力や、実績がある社員に見られる特徴を教えてください。

自責思考を持てるかどうかです。何か問題が発生したときに、誰々のせいだとか、あそこが悪いとかではなくて、自分の問題だと思えるかどうか。そして解決に向けて自分は何ができるかという発想をすぐに持てる社員が結果的にすごく成長しています。

Q: 主体性が求められるということですね。では社長が仕事をする上で大事にしていること、心がけていることは何ですか。

社員に対してもお客様に対してもそうですが、良いところを見つけようとすることです。ビジネスって困ってる人がいて、困ってる人を見つけて、何で困ってるかを把握して、そこに対してのケアとか、改善を実現することで初めてフィーをいただきますよね。

嫌いな人にどうにかしてあげたい、役に立ちたいって、なかなか思えないですよ。だとしたら、好きになる努力をする。ではどうしたら人を好きになるかっていうと、良いところとか、ここすごいなってところを見つけることだと思います。

Q: 社長が将来ギャプライズで実現したいことを教えてください

まずは1000人の仲間が欲しいですね。世界中に。仕事って人生で半分以上を占めていますよね。だったら楽しい方が良い。仕事が楽しければ多分人生も楽しい。

ではどうしたら仕事が楽しくなるのか。同じようなスタンスで生きてる人、ギャプライズの仲間を増やしたいなと思うんです。何かが売れました、目標達成しましたっていうのも5人で喜ぶより10人で喜ぶ方が面白いです。それを1000人に増やしていきたいなと思っています。

学生部会へ

Q: Webマーケティングの専門家として、ブログで発信する際の注意点を教えてください。

誰に向けたブログなのか、全員が共通して意識しないとブレブレになります。イスラエルに興味があるという括りだけでは。緩すぎます。イスラエルに興味があるビジネスマンと学生を比較しても、求める情報、響くメッセージは違います。せめて書く人が具体的にこの人をイメージしていますっていうのを出した方が良いですね。イメージする時にはできるだけ具体的に。

ペルソナマーケティングという言葉があります。個人に落とし込んで、この人に見てもらうためにどうしようか。って考えてみましょう。するとキーワードの選び方、書き方、文体も変わってくると思います。

Q: 学生部会へアドバイスをお願いします。

golf

とにかくどんどんイスラエルに行ってもらいたいです。飯はうまいし、海もきれいだし、暖かいし、女性もきれいだし(笑)。例えばハワイとかグアムなんかに行くよりも、絶対イスラエルに行った方が良いですよ!

周りを巻き込んで、企画をうまく組めると良いんじゃないかな。僕も、周りの経営者を連れて行くことがあるんですよ。イスラエルに行くとみんな驚く。「また行きたい!」と。

甲斐社長、お忙しい中インタビューのお時間を割いていただきありがとうございました!

インタビューを終えて

中山智之

インタビューを通して、社長の社員への思い、仕事への熱意や誇りが伝わってきました。またWebマーケティングの専門家としてのアドバイスや知見も新鮮なものでした。終始笑いが絶えず、気軽に質問できるような雰囲気作りをしていただきました。ありがとうございました。

廣内眞文

今回、イスラエルのIT技術を活用しているギャプライズさんに取材をさせていただいて嬉しく思いました。日々私たちが使っているインターネットサイトにイスラエルの技術が使われていることを知りました。身近なところにもイスラエルを感じ、これからもこのインタビュー事業を続けていきたいと思いました。

※本インタビューは2016年12月8日に行いました。固有名詞、数字、役職などは、インタビュー当時のものです。

  • この記事を書いた人

    中山智之
    中山智之
    東京大学大学院情報理工学系研究科に所属する修士1年。イスラエル発祥のサイバーセキュリティや、ITスタートアップに興味を持っている。それらの技術を理解した上でアウトプットを行い、更に技術発祥とイスラエルというバックグラウンドとの関連性についても調べてみたいと考えている。