映画「奇跡の教室」

第二次世界大戦中のナチス・ドイツによって組織的に行われた大量虐殺、ホロコースト。アウシュビッツをはじめとした数々の強制収容所等で犠牲になったユダヤ人は、諸説ありますが500万人〜600万人とも言われています。

明日8/6(土)公開の映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」は、この悲惨かつ難解なテーマ「ホロコースト」を与えられた高校生達が、強制収容所生存者の証言に接し、意見を交わし、自ら考え抜く中で成長する姿を描いています。出演者の1人の実体験を元に映画化されているという点も興味深いところです。

ホロコーストの悲惨さ、残虐さを伝えるだけでなく、それを人々がどの様に受け止め、考え、そして受け継いでいくのかという点で、ホロコーストという枠に留まらないメッセージを伝えようとしているのではないでしょうか。

映画「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」は 、明日8/6(土)より東京のヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿、YEBISU GARDEN CINEMAを皮切りに全国公開されます。

学生部会メンバーによる感想

今回、日本イスラエル学生部会は映画公開に先立って試写会に参加させていただきましたので、メンバーの感想をご紹介したいと思います。

松村悠太郎(学生部会長)

奇跡の教室」という邦題にふさわしく、その生徒たちの変化には教員を目指す私にとっ て心動かされる作品であった。アウシュビッツを題材として歴史コンクールという難しい 課題に立ち向かいつつ、フランスの公教育に宗教を持ち込まない政教分離政策が如実に記 された作品であることも同時に感じた。

フランスにおける公教育は、宗教を持ち込むことが禁じられており、イスラム教徒のヒ ジャーブやキリスト教徒の十字架のネックレスも着用が禁止されている。今回、取り上げ られた問題児だらけのクラスもイスラム教徒、ユダヤ教徒など信仰の混在するクラスとな っていた。そのため、特に歴史において宗教に関する理解での対立は厳しく、授業を退場 するシーンなどもあった。

しかし、その状況に歴史教師であり担任のゲゲンはアウシュビッツにおけるコンクール をクラスで取り組むことでそうした対話を促そうと努力した。決して生徒に押し付けはせ ず、上手くグループワークに巻き込んでいく姿勢は、「退屈な授業はしないつもり」というゲゲン自らの発言を体現しているものであった。

例え問題児クラスであっても、生徒同士一つの困難に一生懸命立ち向かえば、きっと世 界は開けるという可能性を大きく示した作品であり、実話に基づくということでよりリア リティがあった。日本においてもこうした協働学習により、生徒の発言が活発になるよう な学校づくり・授業づくりができたら良いのではないかと思う。

中山智之

本作はナチスに関連する問題を扱う映画であり、日本ではこれまでも、そして今年も、ナチスに関する映画が少なからず公開されているようです。こうした重いテーマは、多角的に捉えてこそ学ぶもの・感じるものがあるはずであり、本作品はナチスに関する記憶・歴史の継承という面を構成していると考えられます。

本作は、あるフランスの高校の学級崩壊寸前のクラスが、「アウシュヴィッツ」をテーマとする歴史コンクール出場の準備を通して、結束する過程を描写しています。

先生は一緒に記念館を訪れたり、生徒と同年齢で収容されたアウシュヴィッツの生存者に会わせたりすることで、生徒に問題意識を持たせ、自主的に調査させ、自分の考えを発表するように指導していきます。こうしたイベントを経て、生徒の多方面での成長が段階的に詳しく描写されています。生徒それぞれに視点が当たり、特定の主人公の存在がないという点でも、多民族国家フランスの社会を反映した映画だと思います。

一方、途中の伏線が回収されなかったり、セリフのみで省略される場面がしばしばあったり、宗教・歴史的背景を前提にしているのかが曖昧な場面があったりと、やや気になってしまう箇所もありました。しかしそれは映画がテンポよく進んでいくということでもあります。フランスが抱える人種・宗教の問題、歴史を直視して記憶を受け継ぐ意義と難しさ、そしてそれらを乗り越えて一つにまとまることの達成感や素晴らしさを感じることができる、面白い映画でした。

予告編

この記事を書いた人

青海遼
JIFA理事。東日本大震災時に宮城県南三陸町に来たイスラエル国防軍(ホーム・フロント・コマンド)の医療支援チームを見て、イスラエルに興味を持つ。現在、JIFA最年少理事として学生部会をはじめとした若い世代の交流事業に従事。