エアバッグとABS、カーナビはほぼ標準装備と言っていい現代の自動車。最近では縦列駐車支援や衝突軽減ブレーキなどますますその装備の高度化が進んでいますが、もちろんその先には自動運転技術があります。

そんな自動車関連技術においても、イスラエル発の技術が多く使われているということはあまり知られていません。

今回は、イスラエル関連技術の紹介サイト「nocamels」にて「Five Israeli Startups Revolutionizing The Way We Drive」という題で、イスラエル発自動車関連技術が取り上げられていたのでご紹介します。

「私たちの車との付き合いに”革命”を起こす」

なんとも意欲的なタイトルです!

Mobileye: 事故防止システム

Mobileye
Image via Mobileye Pedestrian Collision Warning – Vehicle

Mobileye(モービルアイ)は、ダッシュボードに取り付けられたカメラの映像をもとに、歩行者などの障害物や車線逸脱を検知してドライバーに警告を発するシステムです。

日本でもスバルのEyeSight(アイサイト)をはじめとして多くのメーカーで採用がはじまりましたが、その草分けと言ってもいい存在です。

システムを後付けするビジネスと自動車メーカーに供給するビジネスがあり、後者に関してはアウディやテスラ、日本のメーカーでは日産、三菱、ホンダ等に採用されているとのことです。(詳しくは「イスラエルビジネス・経済情報配信メール」の2015年1月号をご覧下さい)

1999年に設立されたMobileyeは2014年7月にニューヨーク証券取引所に上場、10億ドルを調達しイスラエル企業最大のIPOとなったことでも注目されました。自動運転技術に直結する技術ですから、これくらいの注目は集めて当然かもしれません。

参考

Radiomize: 車のハンドルをタッチパッド化

Radiomize
Image via Radiomize

Radiomizeは、ハンドルの一部をタッチパッド化し、運転中にスムーズにスマートフォンを操作するようにするデバイスです。脇見運転による事故を減らすことを目的に開発されました。

設置はタッチパッドと一体化したハンドルカバーをハンドルにかぶせるだけど簡単。電池も1年間持つとあって、既存の車にも導入しやすそうです。Siriをはじめとした音声コントロールと、運転中はどちらが操作しやすいのでしょうか。

クラウドファンディングサービス「Indiegogo」で製品開発の資金調達をしているというのも今風で面白いですね。

参考

VocalZoom: より正確な音声情報および音声認証を提供

VocalZoom
Image via VocalZoom

さきほど音声認識技術を挙げましたが、Vocalzoom(ヴォーカルズーム)は音声認識技術の適用範囲を大幅に広げる技術です。

「Hey, Siri!」人前でこんなこっ恥ずかしいセリフを言えないことがなかなか音声認識が普及しない理由の一つなのかもしれませんが、純粋に技術的な問題としてその認識精度が挙げられます。もちろん、近年はどんどん精度が向上してはいますが、まだまだバリバリ実用に耐えられるかといったらそうとは言えません。

この課題に、VocalzoomではSEEONという独自の音声認識技術で取り組みます。レーザードップラー効果を用い、顔の皮膚、口、唇、頬や喉の変化を光学的に捉えるマイク技術です。

これにより、特定の範囲を指定、すなわち任意の音声情報のみを抽出できることから、ロードノイズやエンジンノイズ、風切り音、雑踏の音など、様々な雑音があふれる中から、運転者の音声情報のみを抽出することができます。

また、正確な音声情報が取り出せれば、そこから音声認証技術に展開することができます。そのうち、「開けて」とか「さあ行くよ」とか声をかけるだけでドアロックが解除し、エンジンが始動するようになるかもしれません。(詳しくは「イスラエルビジネス・経済情報配信メール」の2016年2月号をご覧下さい)

日本では(株)フュートレックが資本業務提携を行ったとのことで、今後の日本市場での展開が楽しみです。

参考

StoreDot: バッテリーの充電時間を大幅に短縮

StoreDot
Image via StoreDot 5 Minute Car Charging

街中でも目にする機会が多くなってきた電気自動車。国内では日産のリーフ、海外ではテスラなどがポピュラーですね。

高速道路のサービスエリア、大型ショッピングセンターの駐車場などにも急速充電器が整備されつつありますが、電気自動車の普及にあたって課題となるのがバッテリーの容量や充電にかかる時間です。一回の充電でガソリン車と同じくらいの距離を走れて、ガソリンを給油するのと同じくらいで充電が完了すれば、後は価格の問題では無いでしょうか。

イスラエルのStoreDot(ストアードット)が開発する技術では、スマートフォンサイズのバッテリーをなんと30秒で充電することが可能です。自動車サイズのバッテリーは5分で充電が完了、航続距離480kmを目標に現在開発中です。

StoreDotがユニークなのが、アルツハイマー病の研究課程で基礎技術を発見したということです。特定のペプチドが高い静電容量を持つ事が明らかになり、有機分子材料をベースにしたバッテリー「FlashBattery」を開発するに至りました。重金属をベースとする一般的な二次電池と比べ環境に優しく、充放電のサイクル数および難燃性能も高いとのこと。(詳しくは「イスラエルビジネス・経済情報配信メール」の2015年11月号をご覧下さい)

この「電気自動車のバッテリー」という課題に対しては、以前別のイスラエルスタートアップ企業が全く違ったアプローチで解決を試みたことがありました。

Better Place(ベター・プレイス)社が目指していたのは、バッテリーごと交換するというエコシステムの構築です。空になったら、あらかじめ満充電にしておいたバッテリーと交換します。車の所有者とバッテリーの所有者を別け、電気自動車の購入にかかる初期コストを下げるというビジネスモデルも画期的でした。日本でも実証実験をやったこともあります。

ただ、車体構造やバッテリー規格の統一など問題が多く、2013年にBetter Placeは解散となってしまいます。そうではありつつも、同じように自動車産業の構造を変えかねない企業が再びイスラエルから出るのは興味深いですね。

参考

Waze: スマートフォン用カーナビアプリケーション

Waze
Image via Waze

だいぶ日本でも普及してきたスマートフォンですが、カーナビもスマートフォンのアプリケーションで済ます人が増えてきていると思います。

機能数や画面サイズは従来のカーナビにかないませんが、手持ちのスマートフォンで済ませられる利便性や、インターネットを介して地図情報が更新されること、基本機能は無料で使えることなどスマートフォンならではの利点がたたあります。

このスマートフォン用カーナビアプリのパイオニアと言えるのが、イスラエルのWaze(ウェイズ)です。設立が2008年ですから、iPhone 3Gの登場とほぼ時を同じくしてサービスをスタートさせたことになります。

Wazeがユニークなのが、ただのカーナビゲーションシステムに留まらず、ユーザー同士で情報を共有できるプラットフォームとしても機能することです。渋滞が起きている、事故が起きている、警察が取り締まりをしている、といった情報をアプリ上で共有することができ、リアルタイムな交通情報を得ることができます。

(日本でもダウンロードして使うことができますが、ユーザー数が少ないためか情報が少ないのが残念なところです)

そんなポテンシャルを評価されてか、2013年にWazeはGoogleに買収され、11億ドルとも言われる巨額の買収金額が話題となりました。自動運転車の実験を続けるGoogleですが、買収したWazeの技術が多かれ少なかれ関与しているのは間違いないはずです。

参考

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「イスラエルビジネス・経済情報配信メール」では、イスラエルのユニークなスタートアップ企業の情報をご紹介中。駐イスラエル日本大使館によるイスラエル市場に関するレポートなどもあわせてお届けしています。

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この記事を書いた人

青海遼
JIFA理事。東日本大震災時に宮城県南三陸町に来たイスラエル国防軍(ホーム・フロント・コマンド)の医療支援チームを見て、イスラエルに興味を持つ。現在、JIFA最年少理事として学生部会をはじめとした若い世代の交流事業に従事。